
食品ブランドストーリーで消費者の心を掴む事例&成功のコツは?

今年4月に入社しました、Hikaruです。
これまで食品関係の営業を10年やってきて、その中で食材の知識、調理法だけでなく、どうやって食品をアピールすれば売れるのかについて現場で学んできました。
今の時代、商品を作れば売れる時代ではありません。
消費者のニーズをキャッチし、そのニーズに沿った商品を提案する。
それが売れるための基本的なコツです。
その消費者のニーズを満たすものとして、近年注目されているのが「ブランドストーリー」です。
そこでこの記事では消費者の心を掴む食品関連のブランドストーリーについて、実例を交えながらご紹介していきますので、良ければ参考にしてみてくださいね。
目次
食品ブランドストーリーとは?
食品ブランドストーリーとは、その名の通り食品の背景にある『物語』のことです。

具体的には、生産者がどんな想いで、どんな目的で、なぜ製品化したのか…など、ただ食品を目にした時には気づけないストーリー性をアピールすることです。
これによって、消費者に親近感や愛着を与え、購買行動を促したり、リピート率を高めたりする効果があります。
なぜ今、食品ブランドストーリーが重要なのか?
なぜブランドストーリーが重要なのか。
それは食のニーズの多様化に対応するためです。
食品を購入する人の中には機能性やスペックだけではなく、それが持続的かどうか、地域のために協力できるか、生産者を応援できるかなどを考えて購入する人もいます。

いわゆる『イミ消費』というものです。
急に私の娘の話になりますが、以前に『推しの有名人が開発したお菓子をお店で食べたい』とせがまれ、東京まで足を運んだことがあります。
聞けば、ただお菓子を食べたかったのではなく、そのお店の人に会いたい、そのお店でしか体験できないことをしたかったそうです。
このような考えに至ったのは、常にSNSでの情報発信を見ており、開発秘話やお菓子を食べて楽しむ様子などを目の当たりにしていたからでしょう。
ブランドストーリーを設定することで、
・競合他社との差別化
・価格競争からの脱却
・顧客とのつながり・共感・支持を得られる
といった効果があります。
世の中に食品はたくさん溢れかえっています。
消費者の心を掴む!食品ブランドストーリー実例

「生活者のニーズや要望に寄り添ったボンカレー」
発売当初からユーザーに愛されているレトルトカレーのボンカレー。
今でこそレトルトカレーは当たり前にスーパーやコンビニに置かれていますが、開発当時は手軽にかつ美味しく食べられる即席食品はほとんどありませんでした。
ストーリー
世界初のレトルトカレーであるボンカレーを発明した大塚食品。
それができたのは1968年の2月12日、本格的に販売されたのは1969年になります。
消費者に安全で安心できるものを作りたい、消費消費者の助けになりたいという想いから、保存料を使わずに、常温で長期保存できるレトルトカレーが試行錯誤の上に誕生したのです。
それ以降も大塚食品はボンカレーを電子レンジ対応にしたり、じゃがいも・にんじん・たまねぎを国産にしたりと、消費者の利便性や安全性を加味して商品開発を進めてきました。
成功のポイント
ボンカレーがロングセラー品になっているのは、とことん消費者のニーズを追求してきたからです。
また、そのこだわりについて様々なメディアで発信を続けて全世代に認知を広めてきたからこそ、ここまで有名なブランドになったのだと感じます。
『ボンカレー』のテレビCMもよく見ましたよね。
私も小さいころボンカレーを食べて、「何これ!おいし!」と感動したことを未だに覚えています。
そのおいしさには大塚食品の様々な工夫や想いが隠れていたわけですね。
「カゴメ 牛乳が苦手な人や環境に配慮したアーモンドブリーズ」
アーモンドブリーズとはカゴメが開発した日本人向けのアーモンドミルクです。
牛乳や豆乳と比べると、飲用率が低かったアーモンドミルク。
カゴメはそれを広めるべく、日本人向けにカスタマイズした結果、販売量を増やすことに成功しました。
ストーリー
世界規模ではアーモンドミルクが広く普及していましたが、日本ではあまり普及しませんでした。
というのも、従来のアーモンドミルクがあっさりしすぎて日本人ウケしなかったためです。
そこでカゴメは”コク”と”低糖質”をテーマにアーモンドの原材料にもこだわり、牛乳を好んで飲む日本人に合うような味と風味を目指しました。
加えて植物性という環境に配慮した製品であることや、牛乳が苦手な層にも楽しんでほしいという想いもあり、ついに「アーモンドブリーズ」が誕生したのです。
成功のポイント
「日本人にはアーモンドミルクは馴染まないだろう」と諦めるのではなく、日本人向けに原料の見直しから入り、独自の配合比にしてコクを持たせたというのはカゴメのこだわりを感じますよね。
また、牛乳が苦手ですぐお腹を下してしまう人やアレルギーのある人にも楽しんでほしいという想いもどことなく優しさを感じますし、その人たちにとっても嬉しい商品だと思います。
さらに植物性のミルクなので、乳牛の出すメタンガスの抑制効果も期待できます。
自然を愛する価値観の層にもアプローチできるのもこの商品の特徴ですね。
「東北協同事業開発 食の復興を願い誕生した古今東北ブランド」
東北共同事業開発では、東北のおいしさを全国に届けるべく、原料や材料にこだわってお菓子や惣菜、調味料、お酒など様々な商品を作っています。
宮城学院女子大学や東北のメーカーと連携して作ったアイテムは240を超え、「美味しい」「素材の味を感じる」と評価されています。
ストーリー
東日本大震災で東北は甚大な被害を受け、つくる人と食べる人が強い絆で、ずっとつながり続ける仕組みをつくるということで古今東北ブランドが誕生しました。
当時、被災したメーカーは非常に多く、工場の設備も壊れ、事業継続ができないほどでした。
地域の復興と震災からの復興を目指し、今も古今東北は製品化を進めています。
一つひとつの商品の製法や原材料にこだわり、何度も試行錯誤しながら開発を進めている様子が描かれています。
成功のポイント
東北共同事業開発は東北の原料を使った商品開発によって、震災からの復興、地域の復興を目指すという地域貢献度の高い事業を行っています。
そうして作られた商品を買うことで、地域貢献ができるという消費者のニーズを捉えたのが古今東北ブランドです。
ただそれだけでなく、品質や安全性にもこだわっているという点もアピールしているのもポイントです。

生協ブランドではありませんが、主に生協やコープ宅配での販売というのもあり、安全性やおいしさも意識しているのがさすがですよね。
「南三陸の高校生が作った銀鮭ドライカレー」
宮城県の南三陸町にある高校生が作った銀鮭ドライカレー。
若さ溢れる南三陸町の高校生が防災意識の向上についてのアイデアを出し、地元企業とタイアップ。
地元の名産品である銀鮭を使用した地域密着型の取り組みが年配の方の支持を得て、発売からたった2日間で300食分完売しました。
ストーリー
南三陸町というと、2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けた町です。
その町の高校生が防災をテーマに「地元食材を活用した防災食として、災害備蓄を考えるきっかけにもなってほしい」という想いから誕生した商品です。
地元企業であるケーエスフーズとタイアップし、商品には地元の名産である銀鮭を使い、かつ小麦を使わずに作成しています。
また、”冷たくてもおいしいドライカレー”をコンセプトに、災害時でもおいしく食べられることも大切にしています。
成功のポイント
若い高校生を応援したい、見習いたい、買うことで地域を盛り上げたい、という消費者の価値観に寄り添うことのできた商品であるからこその結果だと思います。
また付属的にはなりますが、昨今の防災に対する消費者の意識も高まってきたことから、そのニーズもキャッチできたのもポイントです。

日本はヤバいとか言われていますが、私も若い人たちには希望をもって、様々なことにチャレンジしてほしいですし、そういう若者は本当に応援したいですよね。
「山形ミートランド 幸せを運ぶ牛 幸生牛」
幸生牛とは山形県寒河江市の幸生地区で肥育されたブランド牛です。
プラマイ40℃の温度差、豊かな伏流水の流れる静かな環境でストレスなく育てられた月齢25か月以上の雌牛のみを「幸生牛」と言います。
上質な赤身ときめ細やかな脂身が特徴で、山形県のみならずふるさと納税の返礼品としても好評です。
ストーリー
2021年3月、創立143年も続いていた幸生小学校が閉校。
地元の人口減少を目の当たりにした山形ミートランドの大沼社長が、故郷に何かできないかと想いから幸生牛の肥育を始めるプロジェクトが始動しました。
自然豊かな幸生地区は牛の肥育には非常に適した土地で、また地元農家からはもみ殻やわらをもらい、代わりに良質な牛のたい肥をあげるという循環的な取り組みもしています。
このような取り組みから別名『幸せを運ぶ牛』という名前で愛されています。
成功のポイント
牛に限らず家畜はどういう餌を与え、どんな育て方をして、ストレスをかけるかかけないかで、肉質や風味が大きく変化します。
どういう育て方をしているかをしっかり消費者にアピールし、安心・安全かつおいしい牛肉であることを認識させていますよね。
加えて、地域創生、サステナブルな取り組みをしているのが素晴らしいポイント。
これからの時代、事業の継続的な成長には、社会全体の幸福の両立が不可欠であると思いますし、逆にそれができないと長期的な事業運営はできないと感じます。
食品ブランドストーリー 戦略のコツ

さて、これまで食品のブランドストーリーについてご紹介してきましたが、実際にブランドストーリーを進めていくにあたって、どんなコツや注意が必要かなどについて解説していきます。
①「共感してもらう動機・ストーリーの作成」
まずブランドストーリーを作る上で大事なことは『なぜその食品を作りたいか』という動機です。
しかも、それは自分本位な動機ではなく、ターゲットに”共感”を与えられるかという点が重要です。
例えば、先ほど例に挙げた「幸生牛」は、過疎化していく故郷をこのままにしておきたくないという動機から、循環的な牛の生産へとつなげていきました。
この場合のブランドストーリーにおける共感してくれるターゲットは、故郷やふるさとへの愛着を抱く人。
そして、どうせなら地球環境に配慮したいよね!という人です。

もちろんブランドストーリーだけが消費を促すわけではありませんが、少なくとも購買活動を支援する要素にはなりますよね。
②「酸いも甘いも語る」
完璧なものに対して人は「何か裏があるんじゃ?」と勘ぐってしまう癖があります。
ブランドストーリーでは苦労話や失敗談も折り込むと、より信頼性が増す傾向にあります。
ボンカレーの野菜の国産化に関しては、特にたまねぎの供給に頭を悩ませたそうです。
「国産野菜使用」と表示するには、原料が必ず国産野菜を使っていることが条件です。
しかし、農作物は天候に大きく左右され、安定して供給することが非常に難しく、2016年の4つの北海道の台風が起きた際も非常に苦労されたそうです。
供給を安定的にするために調達担当が農協や取引先と交渉した話もHPに掲載されています。
そういったリアルな話は消費者に信憑性を与え、ファンになってもらう確率が上がります。
③「もちろん商品自体にもこだわり、それを伝える」
たくさん良いことを言ったとしても、肝心の商品自体がお粗末なものでは評価されません。
その原料をなぜ使うのか、なぜその製法で作るのかを事細かに伝え、食品へのこだわりをしっかりアピールすることが重要です。
また商品は食べ物だけではなく、商品を包むパッケージや包装紙も商品のブランディングに関わってきます。
美味しそうな見た目をしているか、ストーリーや良さを表現できているかは、パッケージのデザインに由来します。
食品のブランドストーリーはストーリーから始まり、それを表現し、味わってもらうまでが一連の流れです。
その流れができていれば、消費者をファン化させることができ、リピート率の向上や価格だけではない価値の創出ができるようになるわけです。
まとめ
消費者の心を掴む食品関連のブランドストーリーについて、実例を交えながらご紹介しました。
食品を売り出す上でブランドストーリーがどのような効果をもたらすのかが、おわかりいただけたでしょうか。
成功のコツや注意点などが参考になれば幸いです。

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